100周年記念コンサートの思い出 (B、Cステージ参加のN.K.さんのレポート)


100周年 BC3 100周年記念コンサートはB、Cステージに参加しました。理由は、若い者はB、CステージだということなのでAステージには私は入れません。とにかく、最近、私の頭の中身は子供なみになりつつあります。恐らくもう少しで赤ん坊並みになるでしょう。

 さて、B、Cステージの出演者の名簿を見ると63回生が何人かいます。今年の卒業生でしょう。一方、私(15回生)より古いOBはMさん(12回生)のみです。年齢差は51歳になるのでしょうか? 人数はプログラムの名簿で数えて73名ぐらいです。質、量ともにスゴイの一言に尽きます。私がB、Cステージを選んだもう一つの理由は、是非、演奏したい曲ばかりだったからです。

 まず、「華燭の祭典」。これはKUMCでは我々の学年が最初に弾いた思い出の曲だからです。同志社がこの曲を初演したのと同じ頃です。「15回生が参加せずにどうする?」という気持ちです。

 他の曲も是非演奏したい曲です。「グランド・シャコンヌ」。これはKUMCが藤掛廣幸氏に委嘱した曲で評判の高い曲です。「祈り 〜輝く街へ〜」も小林由直氏に委嘱した作品で、関西淡路大震災の復興の願いがこめられています。あの大震災の時に、後の<楽楽・神戸>結成につながる動きがあったのでした。大震災の思い出とともに忘れられない出来事です。そして「カルメン幻想曲」は大西功造さんのソロです。私はこの曲が大好きで、一部分だけでもドラで弾いてやろうと思って楽譜屋で実際にヴァイオリンの楽譜を一目見て購入を断念した曲です。それを大西さんが弾くのですから参加せずにおくものか! メラメラメラ・・・・・。というわけです。100周年 BC2

 最初の練習日。最も印象に残っているのは、戸田さんが指揮した「祈り」です。始まって2小節目にM1〜M3、D1、D2が一拍半の休みの後に入ります。(Mはマンドリン、Dはドラ) ゆっくりで、トレモロで同じ音が続く。

 なんということのない小節ですが、戸田さんは指揮を止めて注意をするのです。「入る時は、入ったとはっきり判るような入り方をしないように。終わる時もここで終わったとハッキリ判るような終わり方はしないこと。いつ入ったのか判らないがいつのまにか入っている、そしていつの間にか去っている。そうして次々と音を重ねていく。」 そういう不思議な話をするのです。もう永らくマンドリン合奏をやって初めて聞く言葉です。

 私は思い出しました。確か戸田さんは現役のときに「音層空間」を指揮して好評を博したと記憶しています。たしか、あれも各パートが音を重ねていくような曲でした。(頼りない記憶によれば・・・・)

 しかし、こういう前衛的な曲を自信を持って最初から堂々と振る戸田さんは一体どういう人なのか?

 「祈り」の或る場所では戸田さんはこういう説明をしました。ここはM1〜M3は四分音符1分間に50の速さ、M4〜M6は60の速さ、ギターは72の速さでそれぞれ同時に演奏を続ける。3秒してベースが入る。聞いている私「?????」。スコアを見たらピアノは44の速さで同時に演奏します。それで一番に考えるのは、指揮者はどう振るのか? 2本の手では足りない。戸田さんは、振りませんとおっしゃる。なるほど。ん、それでいいのか?

 結局、この部分は指揮なしではギターパート内部で合いにくいとのことで、指揮者は最初だけギターに対して振ることになりました。振るのはその部分のみです。その後、シロフォンが入る時に指示します。その3秒後にヴィブラフォンが、4秒後に別の楽器が・・・・・。指揮者はその指示のみするという具合に進んで行きます。

 

 又、別の所では、M1〜M6の各パートのトップが一斉にソロを弾きます。5秒でこれだけの音符を弾けという指定があって、それが終わって次はD1、D2のソロがあります。ドラのデュエットです。ドラも5秒間という指定です。マンドリンもドラも音符の間に何回かスラッシュがあります。それは休符でアドリブで弾くそうです。D2のソロを歳の功で弾けと言われたのですが断りました。デュエットが合うはずがありません。合わさなくてもいいと言われました。でも固辞しました。指揮者の説明によれば、各ソロを弾く人は其々アドリブで弾くのですが所々音が重なります。プリズムのようにピカッと光るという効果をねらっているそうです。後に小林由直氏が来て指導をして下さったときも同じ話をされていました。偶然が生み出す音楽ですね。指揮者、奏者によって変わるどころか、同じ指揮者、同じ奏者でも毎回少しづつ異なる音楽が生まれます。JAZZと同じように弾けば良いのでしょうか? JAZZと違うのならどのように違うのでしょうか?

 幸い、暫くすると全パート同じ速度になり、指揮者も振りますのでホッとします。

 

 B、Cの練習に参加されていない方は、リハや本番の時に指揮者が左手で1や2などの数字を示していたのにお気づきでしたでしょうか? 古典的な曲はメロディがあって伴奏が入るだけのシンプルな曲なので奏者が途中で今どこを弾いているのか見失うことは稀です。(ただ、私は常に迷える羊ですが・・・。)この曲は各パートの音を重ねていくような曲ですので、見失いやすいのです。それで楽譜に1や2などの数字を書き込んでおいて、そこに来たら指揮者は左手で表示するのです。そうして迷える奏者を拾い集めているわけです。わざわざ1や2などの数字を書き込まなくても、あらかじめ楽譜にはAやBやCなどが書いてあるではないか、と思う方は指揮者がAやBやCなどを指で或は体で表現しているのを想像してみればいいと思います。

 

 小林由直さんが指導に来られた時のこと。小林さんが20年前のKUMCの初演の時のメンバーをよく記憶されていて、声を掛けていました。「大西君もあの頃はまだ学生だったね。」などと。賛助出演した打楽器の人も20年前に出演されたそうです。小林さんの傍に行って話しかけている人たちは当時の参加メンバーなのでしょう。

 小林さんは指揮者の横にいて指導されるので、私にはあまり細かいことは判りませんでした。記憶に残ったのは、「ここからは復興のモティーフが繰り返し何度も出てくるが、何度も繰り返して少しづつ復興していくので最初から音を上げないように。」とおっしゃったことです。

 また、八分の六拍子を123,223と数えて二つ振りする個所があるのですが、小林さんは「二つ振りでよいのだが、元は123,223の六拍子なので、それを思い起こさせるために一振りを時々三つに振ると良い」というアドバイスをされたのが非常に印象に残っています。

 この日の小林さんの印象は戸田さんによれば「全体として小林さんより、さすが神大OB、よく弾けているとおっしゃっていただきま した。」ということでした。

 

 このように「祈り」の練習は、私に随分多くのことを教えてくれました。このことだけでもB、Cチームに参加した甲斐がありました。

 ただ、この曲は最後まで弾けない曲でした。5拍子の所があるのです。指揮者は123,12と3拍分の大きな一振りと2回目の12の小さな振りが続きます。ドラの楽譜は単純で難しくないのです。しかし、5拍子を二つに振っていて、2拍目で音が変わるのがうまく把握できないのです。「123,12」か「123,45」と勘定し続ければ問題ないのですが、慣れないので指揮の動きを目の端の方で捉えながら演奏していると2拍子に勘違いしてしまうのです。又、5拍子がたまに4拍子になる所があるのですが、変拍子の指揮に慣れないので、楽譜を見失ってしまうのです。これは最後まで克服出来ることは、ありませんでした。それどころか、音符を見失なった途端に意識が朦朧となるのです。これは参りました。

 しかし、録音した演奏を聞くとこの変拍子の部分は、非常に良い部分なのです。ドラは単純な楽譜を弾いているのですが非常に効果的なのです。私は若い時に現代邦楽に熱中したことがあります。随分、コンサートに行きましたし、レコードも買いました。楽譜まで買ったこともありました。そうしたせいか、聞くとこの曲の良さが非常に良く判るのです。不安な音から始まり、破局を迎え、混沌の状態が続く。その中で小さな復興への動きが出てきて、やがてそれが次第に大きくなって希望への道が見えてくる、そういう曲なのだと思います。

100周年 BC

 次に、高田さん指揮、大西さんソロの「カルメン幻想曲」。高田さんの指揮は重厚だと思います。クラシシックがしっかり身についているのでしょう。安定し、信頼できる指揮です。途中で少し遅くする個所があります。高田さんは「彼(大西さん)は普通のスピードで弾けるかもしれない。多分弾けるだろう。しかし、マンドリンの響きが十分出るようにしたいので少しゆっくりにする。」と語っていたのが印象に残っています。勉強になりました。

 坂本さんの「グランド・シャコンヌ」。坂本さんの指揮はいつもリズミカルです。曲の流れが大変心地よく展開されていきます。これは名曲だということが良く判りました。私が楽譜をもらってすぐに弾いたときの印象よりはるかに良い曲でした。

 材木さんの「華燭の祭典」。これは名曲なのは判っていましたが、材木さんは若さの持つエネルギー、一途さでもって感動的な仕上がりにすることが出来たのではないでしょうか。

 どの指揮者も曲の最後の音を伸ばすとか、切るとか消音の指示も含めて毎回きちんと指示するのに満足しました。そういう当たり前のことに私は飢えていたような気がします。

 それぞれの曲について他にも沢山あるのですが、もう多くの字数を費やしました。最後にB、Cステージのオケ全体の印象を書いて終わりにしたいと思います。

 やはり、全てのパート共に良く弾ける人が集まっているのでしょう。各パートの音がよく聞こえてきます。

 ギターの人数が多いのは、恐らくKUMCの後輩たちがよい曲を選び、良い演奏をし続けた結果だと思います。練習の時もギターの音がよく聞こえてきました。私はギターが好きなので、ギターが聞こえるのは非常にうれしいのです。逆にギターが聞こえてこないオケは寂しいと感じます。

 聞こえてくるといえばローネです。これは素晴らしく豊かな音量で聞こえてきました。女性ながらあっぱれな演奏でした。ローネはKUMCの宝ですね。

 セロパートも精鋭ぞろいです。十分な音が伝わってきます。うらやましいです。

 ドラパートもいいパートでした。トップも今まで聴いた中でも最高の魅力的な音で演奏していました。一人一人が十分な音を出せるので、私は無理して大きな音を出す必要はありません。ごく自然に弾けばいいのです。また、私がどんなに頑張って音を出しても目立つことはありません。これも自然な演奏を可能にしてくれます。私が安心してドラを弾ける場所でした。私が現役の時にこういうオケでこういう立場で弾きたいと言っていたとおりの「約束の地」だと感じました。

 

 この原稿は、元ちゃんと名古屋で「山ちゃん」の手羽先を食べながら話をしたのを元に作成しました。

更新日:2015/09/18